ヒースロー郊外のレストランに、彼らは居た 「ごめんなさーい、店員さん、油揚げありますかぁ?」 店員がさっヒースロー郊外のレストランに、彼らは居た 「ごめんなさーい、店員さん、油揚げありますかぁ?」 店員がさっとセルフィの近くに寄った 困り顔で、セルフィに事情を話しているようだ 「えーと、すみません、ここ、洋風レストランなので、油揚げなどの 東洋の食べ物の類は置いていませんので…」 セルフィは、すこしムッとした顔になった 「じゃあ…」 そういうと、セルフィは呪文を唱え始めた 「愛と誘惑の神よ…我らの邪魔となるものを魅了せよ!」 まるで、誰かが合唱しているように、美しい歌が響いた 「え、ちょ、ま…」 ティルディが言った瞬間、セラフィの辺りの人がぼとぼとと倒れ始めた・・・ 静寂が訪れる。 そして、今度はピンクの霧が発生し…消えた 「う、うーん…」 ティルディ、ジャック、リヴォル、店員と、続々と目を覚ました 「ねぇ、店員さーん」 「はいっ、油揚げですね!いますぐ仕入れに行きます!」 店員は、そういうとさっと、市場のほうへ向かっていった ニヤニヤして、それでトロンとした目で… 「はい、この物語、完っと、」 セラフィが言った 再び、静寂が訪れた・・・ 〜完〜 「って、まてまて、何をした!セラフィ」 ティルディが急にきりっとした目になった セラフィは、唖然としている 「そんなぁ…魔力が弱いのかな…いや!きっと、はっきりとした意思で 考えなかったからよ!もう一回…」 セラフィが、ふたたび呪文という歌を紡ぎ始める… 「まてまて、何をやってるんだって!?」 ティルディが聞いた 「あー、もう!集中できないじゃないですか!見ての通り、『魅了の呪文』ですよ」 セラフィがジャックを指さす ジャックが口を開いた 「セラフィさまー、何か御用ですかぁ」 「…さいですか」 マントに、冷汗が垂れた 「店員さん、曲変えてください〜」 再び店員がセラフィの近くに寄った 「はいっ!どのような曲がお好みでしょうか!」 「そうだねぇ…じゃ、洋楽!お願いします!」 蓄音機から発せられる音が消えた 静寂が訪れる、風も強く、窓ガラスがカタカタと音を鳴らした デジャヴ、完全なデジャヴだった 一秒、二秒、三秒 ばっこーん! 扉が、まるでタイミングを狙っていたかのように、 それなりに広いレストランに響くほど、大きな音をたてて外れた 漆黒の服を着た男が、扉の所から…いや、扉があった所から現れた 「おい、どこのドイツだ、普通の人に向けて魅了呪文を使ったのは」 バレットだった、 相変わらず、普遍的な言い方だったが、相当怒っているのが解った 「ヨーロッ」 リヴォルが言い終わる前に、ティルディが指を指した 「こいつです、もぉ、本当にごめんなさい!」 丁寧にお辞儀をした 「ちょっと、来い!」 バレットは、セラフィを店の隅に連れて行った 「なんですか?」 セラフィはきょとんとしていた 「馬鹿が!関係もない者に魅了呪文などつかう…」 刹那、バレットは、レストランにいる全員―――ティルディを除く―――に 担がされていた 「ふん」 少し体をひねると、すぐに、レストランの床に落ちてしまった その瞬間、バレットは懐に手を潜らせて、珠を投げた ボンッ! 今度は青色の霧が噴き出した そして、人々は再び倒れ、眼を醒ました “う、うーん…俺何してたんだろ…” “あれ?なんで倒れてるんだ?” そして、そそくさと自らの居場所に戻った 再び、活気が訪れた セラフィは、ショックを受けていた 「な、なんで…簡単な珠なんかに…」 がっくりとうなだれた バレットは、慎重に、言葉を選ぶように話し始めた 「まだ…鍛えられていない魔力…だからだ…センスは、良い だが、問題は…どうして、どうして…普通の人に呪文をつかったかだ …後々…大変なことになりうる」 呪文の主は、言葉に詰まったようで、う…としか言わなかった 「不純な理由なんだろう?・・・・今後からは、絶対、するな」 そうして、漆黒の男は、こんどはティルディに向かった 二人は、ひそひそと、話を始めた 「ひそひそ…(少しは、人を傷つけない言い方ができるようなになったな)」 バレットが、話の先手を握った 「ひそひそ…(元からしておらんわ、未熟な戦士め、それより…)」 ティルディのこめかみがかなりひくついたように見えた いや、間違いなくひくっとなっていた 「ひそひそ…(未熟って、なんだ、未熟って…で、なんだ)」 「ひそひそ…(ついていく…あの女の子がまた変な行動をしないように監視する)」 「…じゃ、よろしく」 ティルディは手を差し出した 「…ああ、よろしく願う」 バレットも、その手を握り返した 後ろから、男が近づいてきた 肩をガシッとつかみ、そして… 「なん・・・」 後ろを振り向いた …ジャックだった 「のう、御二人さん、何をコソコソやってんだ?もうそろそろで出発だぜ?」 刹那…ティルディとバレット、二人は走り出した、 昼飯という名の獲物に向かって… 嗚呼、忘れ去られている、油揚げ、店員A ふらふら… 遠い市場からやってきた店員は、体力も尽きようとしていた、 そして、あと少しでレストランにつこうとしているところで… バタン! 力、尽きた 人通りの少ない市場とレストランの間の道、 もう、二度と、人は来ない、そして、俺は… あのかわいい子に油揚げを渡すという人生最大の使命も達成できずに、 死んでしまうだろう。 店員は、太陽を見つめた 「ああ…おてんとさんは、いつまでも輝いてやがる…」 意識が、失くなった 一方、変わってティルディ一行は、セラフィを慰めるため 油揚げを市場までいって買おうとしているところだった 「ところで、なんで泣いているんだ?セラフィ」 ジャックが、不思議そうにリヴォルに問いかけた 「さぁ…?私もまったくわかりません」 うーん、と、二人は深く考え込むような形を取った そして、リヴォルが、ポンッ!と、手を叩いた 「お!なんか思いついたか?」 「油揚げが食べれないから、泣いているんでしょう!」 人が倒れる音がした 「だ、大丈夫ですか!?」 「アホかぁっ!そんな幼稚い理由なわけじゃないだろ!」 そして再び、二人は考えるポーズをとった 前方では、バレットが、やれやれ、とでも言うように、 首を傾げた 「まったく…まともな考え方ができないのか?あいつ等は」 「仕方ないだろ、記憶がないんだから…」 足音が辺りを支配した 道は、ある程度整えられていたが、それでも石畳は敷かれていなく、 また、雑草もぽつ、ぽつ、と生えていた そして、果てしなく長く感じられるほど、 背景が全く変わらない 花さえ、まるで人為的に植えられているように見えた 山もない、地平線のみが、空と地を分けていた 「あれ、何かありますよ?」 リヴォルが、まるでなにかある様に指を指した 「ん・・・何も見えんぞ?」 ジャックは、幽霊でも見るように、何もない空間をを睨んだ 「仕方がないなぁ…はい」 何か黒いものがジャックの手に手渡された 「なんだぁ?これ」 ジャックは、手に渡された、何か、を見た 何かをかけるのだろうか、剣の柄のように見える部分は、後ろの部分が 曲がっていた その『柄』の部分はガラスの様なものに繋がっていた ガラスのようなものも、また縁どられていた 「メガネ、って言います」 …足音が再びあたりを支配した 「…なんだ、その、えーと…ガネメ…だっけ?」 「メガネです」 ジャックが、わざとらしそうに頷いた 「そう、それ、遠くまで見える呪文でもかかってんのか?」 「まあ、そんな感じです、耳にかけてみてください」 また、静寂が訪れた ジャックがなんとか試行錯誤をして、眼鏡の主に声をかけた 「こうか?」 「なんと…まあ」 そう、まさに、「なんと、まあ、」と言いたくなるようなかけ方をしていた 普通かける、耳の上には何も載っていない 耳の下にかかっていた いや、これは…ぶら下がったというほうが正しいが 「どうやったらそんなかけ方ができるんです? ちょっと、止まって…しゃがんでください」 「こうか?」 ジャックは、リヴォルに向かい、しゃがんだ 「…と、はい」 眼鏡をかけられたジャックは、今にも踊りだしそうに興奮していた 「おお!ものがよりくっきり見える!」 「でしょう?メガネの第一の効果です、つぎに、あそこを見てください ジャックは、眼鏡の主の指をさすほうを見た 「おおい!人が倒れている!」 ティルディが、ジャックたちに向かって、叫んでいた 声が聞こえる 何人ものいる、 ――そう、ティルディたちも含む―――物語のキーとなる1人 レイン=アスイールが、眼を醒ました ここは…ヒースローの民宿だろうか? ヒースローの民宿の特徴の一つ、白いレンガ壁とベージュのカーテンが見える 油揚げを入れた袋が、机に乗っかっている …なんで買ってきたんだろ? 場違いのようなことを、レインは思った ぎぃ… ドアがよわよわしく開いた 「あ…」 まるで、天国から舞い降りた天使のようにみえる―――すくなくとも、レインにとっては―――少女が、レインの近くに近寄った そして…わっと、泣き始めた 「あの…あの…魔力が未熟な上に、…自分がしたいが為に魅了呪文をつかって、ごめんなさい!」 そう言って、セルフィは泣き崩れた …ん?魅了呪文?なんだっけ… この前、護身術の道場に行ったとき、聞いたような… 「あ!」 そう言われて、天使のような少女は、ひっ、と身を引いた 「ああ、そっか、あの時油揚げがなかったから…」 不思議と、怒りは薄まっていた、 「いいよ、いいよ、気にしない」 のほほーんと、そういった その魅了呪文とやらが切れたのだろうか レインに見えていた 少女を包んでいる、キラキラとした白いオーラのようなものが消えたのかのように見えた 夕食、戦士たちの休息の時間 「いいんですか?こんなにごちそうしてもらってー」 レインは、再びのほほーんとした感じでそういった 今度は、わざとだが (こうすれば確実にOkをもらう…よしっ!夕食代GETだぜ!) 「いらないのか?」 漆黒の服を着た男は、無愛想にそういった 「いえっ!いります、ぜひともいります!」 「じゃあ、すぐに食え」 「あいっ!」 がつがつと、レインは並べられた夕食を食べ始めた 「だんで…みっひょにふれできま?…戦闘とかもあるし、危ないだろう」 ジャックが、口にあるものを飲み込みながらバレットにいった バレットは頷いた 「うむ…だが、こいつにはセンスがある、そのうえ、筋力も付いている様だ」 そう言って、一口、パスタを口に放り込んだ 「魔法のセンスのこととか、そんなのがわかるのか?」 ティルディは、皿にあるキウイをジャックの皿に取り除きながらいった 「俺は、仮にも一度軍にいたこともある人間だ それくらいわからなくてどうする」 また、一口 「あれは、いろいろな武器を扱ったことのある腕だろう たとえば、肩がゆがんでいる、これは、剣を使ったことのある証だ」 一口食べて、また言い始めた 「次に…二の腕の筋肉、槍を使わなければ、あれほどついていまい」 ティルディ、ジャックが、少し感心したような顔になっていた 「…なんだ?それほど信頼がなかったか?」 ティルディは、キウイを全部移し終えたらしい、クリームシチューを一口 そして、頷いた かこーん 気味のいい音がした 「いてて…」 ティルディが、頭をさする 「だ、大丈夫ですか?」 リヴォルが、白い塊…ご飯というらしい それを食べながらいった 「リヴォルよ、最近それ言うの多くないか?」 「…気のせいです」 ジャックは、今度はスープに戦いを挑もうとしていた 「って、おい、誰だ、こんなにキウイ入れたの…って、一人しかいないか のう、のほほん君」 レインは、既にデザートに取り掛かっていた アイス、ストロベリーケーキ、タルト…甘そうだ 「ん?まんふぇふはー」 返事をした、のほほんとしているのは自覚している様だ 「まず、口のものを飲み込んでから返事をしてくれ」 「んぐ…ぬぐっ!?むむー」 言わんこっちゃない、そんな顔で、のほほん君(ジャック談)の背中を思いっきり叩いた ばこっ! 「…これまたいい響きがしましたね」 リヴォルは、東洋の辺境の国のお菓子…桜餅とやらを食べ、熱く、苦いお茶を飲みながらいった 「っげほげほ…で、なんですか」 「なんか、武器扱ってたか?」 「ええ、剣、槍を扱ってました」 ほほぉ…さすが、といっちゃ、さすがだな 内心疑っていた『バレット』という人物は、本当に軍にいたようだった 疑いも晴れた。ジャックは、デザートに取り掛かった 「しかし、なんだ、その緑の飲み物、甘いのか?」 ティルディは、今度は緑の塊―――塩コンブというらしい―――を 口直しにたべているリヴォルに聞いた 「まさか」口に笑みを含みながら、リヴォルはいった 「ここの緑茶、結構いけますね、すいません、2杯おかわりください」 緑茶2杯が現れた 「なあ…飲んでみてもいい?」 「どうぞ?」 再び、息をつきながら、リヴォルが言った ティルディは、リヴォルのやっている通り、 まず、コップの様なものの底に掌をつける そして、そのコップを包むように、てをつける ―――下品だが―――ずずーっと、音をたてて飲む ・・・・ ・・・・ ・・・・ 「にっがぁつっ!?そしてあっつぅう!?」 「そうですか?コーヒーの方が苦いと思いますけど」 ティルディが無駄に大きいリアクションをとりながら いった 「あれは、砂糖とか入れれるのっ!」 「じゃあ、入れてみては?」 ああ…この男、明らかに策略にはまっているな… 皆が、そう思った 「まっずぅううううううううううううううううう!?」 レストラン中に、声が響いた 一方、レストランの外… ―――あはは・・・・面白いことしてるじゃん 漆黒の闇の中、声が響いた ―――クックック・・・・たまには、遊んでやろうか…新入りくんもいるようだし? 急に、強い風が吹き付け、空間という空間が歪み…そして、戻った 「手伝ってあげましょうか?」 女と男が、ゆがみ始めたところから現れた 雰囲気ががらっと変わった ―――なんだ、お前等、せっかく逃げだせたと思ったんだがな 「我らからは逃げられぬ」「あのマジャル人は我らの獲物だ」 まるで、呼応するように男と女の声が響く 「召喚獣めが、我らに逆らうなど」「言語道断」 ―――ふん、俺は獣、ではないぞ? 「黙れ」「さあ、戻ってもらおうか」 男が、念仏のように、言葉を紡ぎだした ―――そんなクソ長げえ呪文なんぞ、逃げてしまえば… 女が、何も言わずに手をかざした 火の玉が襲ってくる ―――移動妨害…か、やってみやがれ そして…声の主は消えてしまった 「逃げた・・・か」 「何、別の召喚獣を呼び起こせばよい」 「なるべく、強い召喚獣をな」 そして、男女もいなくなった ―――翌朝 ジャックは、寝起きの悪いティルディを起こすべく ティルディの部屋に向かっていた ―――ふっふふっふふふふふんふ… 鼻歌を歌いながら 「ティルー、キウイを目にかけに来たぞー」 一分後…二分後…三分後… 「おーい…キウイを」 がごっ! とても人が起きるときの音とは思えない音がした くそっ!? ティルディの声が聞こえた 「外か!?」 外に出ると、既に、のこぎりの刃を持つ剣の主ティルディと 正確無比に弓を扱う男、バレットが 翼をもつ、巨大な竜と戦っていた 「ジャック!すぐにみんなを起こしてくれ!」 竜が後ろで火を吹こうとしていた 「ティルディ!危ないぞ!」 「くっ!?」 間一髪、バレットが叫んだお陰でティルディは炎から逃れた 「さんきゅ!」 「次!来るぞ!」 爪が空を切る 刹那! 「おらぁっ!」 ティルディが竜に飛び乗った 弓が5本、鱗に突き刺さる、そして、フランベルジェも、竜の右腕に突き刺さった! ぎゃおーん!? 竜は雄々しい雄たけびをあげ…地に落ちた 「終わったか?」 ティルディがフランベルジェを抜いた 「はぁ…はぁ…連れてきたぞ!」 全員がそろった、 「終わったか…」 ジャックは、肩で息をしていた リヴォルは呪文を唱えている様だ セラフィはおびえている レインは槍を持ってきていた 「いい選択だ…レイン、竜は空を飛ぶことが多い、だから、槍は効果的だ」 嫉妬、そうかもしれない、レインは武器の選択を褒められ、 ティルディは武器の選択で怒られた だが、そんなことは、どうでもいい、なぜなら… 「いや!まだ生きています!」 そうだ、仲間に嫉妬するなど、絶対にしてはいけない 再び、ティルディは竜に向かって駆け出した 竜は、自らに炎を撃った 「な…、自分から死のうとしている!?」 ジャックは、素っ頓狂な声を上げた 「違います…回復しています!」 リヴォルも、また、驚いていた 竜は、まるで無傷の状態だった 戦う前のように 「セラフィ!リヴォル!なんとかして回復を阻止しろ!」 リヴォルは頷いた、 だが…セラフィは俯いたままだった …まったく!女ってやつは! バレットは柄にもなく、苛立っていた だが、戦闘に支障は出さない程度だった、そんなつもりだった 閃光のように、竜に矢が突き刺さる 一本、自制を失ったかのように竜を飛び越した矢があった セラフィに向かっていた 「あぶない!」 矢は、セラフィに突き刺さった…はずだった 矢は、再び向きを変え、竜に突き刺さった セラフィは、自らの力に驚いていた ―――まだ…鍛えられていない魔力…だからだ…センスは、良い その言葉が、セラフィの脳裏によぎった 自信がもてた ―――そうだ、センスは良い、むしろ、センスが良いんだ バレットは、笑みをもらした 「ちょっと、皆さん!着てください!」 ぞろぞろと、木の陰に皆が集まった 「最初にバレットさんは竜の真正面、セラフィさんのところに」 リヴォルが指をさした 竜は、今にも火の玉を吹き出しそうになっていた その真正面にはセラフィがいた 「危ないぞ!」 ジャックが叫んだ 「大丈夫です。絶対」 リヴォルが激しく頷いた 「ティルディとジャックさんは、その横にいてください まず、バレットさんが目に矢を撃ち続けます その時、眼に当たったら竜がひるむと思いますから、 その瞬間、翼の付け根に飛び移って、腕と翼を切り付けてください 竜が炎を吹き出しそうになったら、頭に乗り移ってください そこが竜の炎の死角です」 一息つき、そして、再び言い始めた 「炎を吐き始めようとしたら、セルフィさんが水の呪文で 消火します そして、レインさん、ここが重要ですよ 僕が呪文で支援しますから、竜の口に槍を投げ入れてください」 レインが頷いた 「さあ、行きますよ」 顔をあげると、セラフィが火の玉に立ち向かっている最中だった 「危ないぞ!」 しかし、火の玉は、セラフィの目前で消えた セラフィが水のバリアを張っていたのだ 「新しいセンスか?やはり、良いセンスだ」 水の呪文のことを言っている様だった セラフィの顔は、まるでなにか楽しいことが待ち受けているかのように、 笑っていた、それも、凄い剣幕で そして、全員が配置についた バレットが矢を撃ち始めた やはり、閃光のようだった 竜は牙をむき出していた 火の玉が、瞬時に生み出された 巨大なはずなのに早い 地面に当たった、 黒こげだ 二発目が放たれた 今度は木に当たった 三発目が放たれる瞬間! バレットの矢は、怒れるライオンのように、竜の眼に食らいついた 竜の悲鳴が地を揺らす ティルディはジャックと顔を見合わせ、駈け出した 竜が体制を掛けなおそうとした瞬間、ジャックは上りついた そして、竜のうろこに、聖剣と魔剣を突き続けた ティルディは、体制を掛けなおした竜に振り落とされかけていた 「わっ!」 天地が真っ逆さまに見えた、 落ちて死ぬのだろうか… 瞼を閉じた フランベルジェを握りしめた しかし、落ちなかった、 瞼を開けた フランベルジェは、竜の鱗を貪るように突き刺さっていた 上には痛々しい斬り付けられた跡がある ティルディは、まるで超人的な動きをとり、剣2本と自らの体を 竜の腕の付け根に乗せた 「ありがとよ!魔法使いさんたち!」 セラフィ、リヴォルの力かそれとも、火事場の馬鹿力か、 どちらかわからなかったが、そう、いった ジャックは、すでに、頭に飛び乗ろうとしていた 竜の口から歪みが生まれる 炎だ 「こうしちゃいられねぇ」ティルディはつぶやいた、 そして、頭に飛び乗った セラフィは、既に呪文の詠唱に取り掛かっていた 竜も、火の玉を吐き出そうとしていた ―――火の玉…だと!? 「セラフィ!バリアを張れ!」 遅かった すでに、火の玉は放たれた 今にも、セラフィは吹っ飛んで…死んでしまう この数秒が、何年かに感じられた バレットは、重要なことを忘れていた 呪文使いはもう一人いる――― 火の玉は、湖に跳ね返された レインは、一瞬の迷いもなく、槍を放った 選手交代か リヴォルは、座り込んでしまった セラフィは、槍を水の流れに乗せた 槍は、竜を貫いた 戦士たちは、それぞれ、自らのいる場所に座り込んだ ティルディと、ジャックは、龍の墜ちた場所から飛び降りた セラフィとリヴォルとレインは、顔を見合わせ、笑った バレットのみが、動いていた ジャックのところへ、向かっていた ――――なに!あの威力の聖剣と魔剣がレプリカだと!? ジャックの声が、外に響いた
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