ここは何処? 何も見えない。何も聞こえない。 何だろう。暗い…暗すぎる。 圧迫されそうな重圧に耐え切れず大声を上げた。 返ってその後の静けさで、耳がおかしくなりそうになった。 思うことはただ一つ。 とにかくここを立ち去りたい。 静寂の中に私の走る音だけが響く。 妙だった。 ずっと走っているのに何にも当たらないのだ。 ここが牢屋のような場所なら壁に突き当たるだろう。 もしも日の当たらない森なら何かにぶつかるのは言うまでもない。 走り疲れた私はそこに立ち尽くした。 また気の狂いそうな静寂……。 そこには自分の息遣いだけが響く。 トン、トン、トン、トン。 私はその場に座り、指で音を鳴らした。 少なくとも静寂からは逃れられるだろう。 やがてそれにも疲れると眠った。 せめて夢の中ではここから離れられると信じて。 そして道を探して歩く。 ……すると、何かに当たった。 それは硬かった。 触って見ると、人の顔の形をしているような何かであった。 ことっと置いてしばし黙祷。 私はそれを悼むのと同時に羨ましいとすら思った。 何かを踏んだ。 触って確認してみる。 ・・・っつ。 指が痛い。 どうやら刃物のようだ。 もしかしたら。もしかしなくてもこの仏さんに関係があるのだろう。 ふと思考が楽な方へ流れる。 「いや。駄目だ。」 私は、思い直してその刃物を捨てようと思った。 だが、なぜか捨てられなかった。 迷った挙句に私はこのナイフを持っていくことにした。 もし、これを一度も使わず抜け出せたら、この仏さんに「ざまぁみろ!」 と言ってやるために。
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