深夜の静かなプラットホームに、今日の最終列車が入ってきた。ドアが開いても、降りる客は一人もおらず、乗る客は自分しかいない。  車内は、ガタンゴトンという音と、その音に伴う振動が支配していた。  誰もいない車内で、長い座席に一人で座る。なんとなく、孤独感がこみ上げてくる。  宴会の帰り。仲間たちと散々騒いだ後に、こんな静かな場所に放り出されてしまうと、とても寂しくなる。段々と、自分が惨めになってくる気もする。  ふと車内の吊り広告を見やると、朝の電車でも同じものを見た気がした。その時は、この電車は人であふれかえり、息もできないほど混みあっていた。カーブのところでは、周りの人に押しつぶされ、小柄な私は足が浮いてしまうほどだ。  電車は、そんなごみごみした顔も、こんな寂しい顔も持っている。そういえば、高校から電車通学を始めて、入学式の日は電車の中でもう緊張でがちがちになってたっけ。ああそういえばその時、隣の人のヘッドホンから聞こえてきた曲が私のお気に入りで、それで緊張がほぐれたんだっけ。そうだ、それでずっと聞きほれて、乗り過ごしそうになったんだ。回想にふけっていると、次の駅への到着を知らせるアナウンスが聞こえてきた。あれ、この声どこかで聞いたような気がする。そうだ、私の担任で、私が一番嫌いだった先生。だみ声で、頑固で、でも結構生徒思いだった。  『あの学生時代も、今ではいい思い出だな。』なんてことを思いながら電車を降り、くるりと後ろを振り返った。電車は既に動き出し始めていた。電車が駅から滑り出そうという瞬間に、「これからもよろしく」と、一声かけた。  私は改札のほうへ向かい、深夜のプラットホームは、また静かになった。
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